
「毎日、身体のどこかが痛い」「肩や腰、膝など次々と違う場所が痛くなる」「検査では大きな異常がないのに痛い」。このような身体の痛みに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
身体の痛みは、単純に「痛い場所が傷んでいるから」だけで起こるわけではありません。けがや炎症、神経の障害だけでなく、痛みを伝える神経系の変化、睡眠、ストレス、過去の経験など、さまざまな要因が痛みの感じ方に関係することがあります。
一方で、突然の強い痛みなど、病気やけがの重要なサインとして現れる痛みもあります。ここでは、なぜ人間は痛みを感じるのか、身体の痛みにはどのような原因があるのか、毎日身体のどこかが痛い場合に何を考えればよいのかを解説します。
痛みは身体を守るための重要な感覚
痛みというと「なくしたいもの」と考えがちですが、痛みには身体を危険から守る役割があります。
たとえば熱いものに触れたとき、私たちは反射的に手を引きます。けがをした場所が痛ければ、その部分へ負担をかけないように行動するでしょう。このように急性の痛みは、身体に危険が起きていることを知らせる警告として働きます。
しかし、すべての痛みが「身体の損傷の大きさ」をそのまま表しているわけではありません。特に痛みが長期間続く場合には、けがや炎症だけでは説明できないことがあります。
身体はどうやって痛みを感じるの?
皮膚や筋肉、関節などには、身体にとって危険となり得る刺激を感知する仕組みがあります。こうした情報が末梢神経から脊髄、脳へ伝えられ、さまざまな情報と統合されることで私たちは「痛い」と感じます。
重要なのは、痛みと組織の損傷が必ずしも同じではないことです。
同じようなけがでも痛みの感じ方には個人差があります。また、同じ人でも睡眠不足や疲労、不安、ストレスなどによって痛みの感じ方が変化することがあります。
つまり痛みは「傷の大きさだけ」で決まるものではなく、身体と神経系、心理・社会的な要因などが関係する複雑な体験です。
身体の痛みにはどんな種類がある?
痛みの仕組みを理解するうえでは、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛という考え方があります。実際には一人の痛みに複数の仕組みが関係することもあります。
侵害受容性疼痛
組織の実際の損傷や損傷の危険によって侵害受容器が刺激されて起こる痛みです。けがや炎症などに伴う痛みが代表的です。
切り傷、打撲、捻挫などで感じる痛みをイメージすると分かりやすいでしょう。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって起こる痛みです。
痛みだけでなく、しびれや感覚の変化などを伴うことがあります。ただし、「しびれているから神経障害性疼痛」「坐骨神経痛だから必ず神経障害性疼痛」と症状だけで決められるものではなく、症状の経過や診察、必要に応じた検査などを含めて判断されます。
痛覚変調性疼痛
明らかな組織損傷による侵害受容性疼痛や、体性感覚神経系の病変・疾患による神経障害性疼痛だけでは十分説明できず、痛みを感じる仕組みそのものが変化していると考えられる痛みです。
長引く痛みでは複数の仕組みが重なっている場合もあるため、「この場所が痛い=この組織が悪い」と単純に判断できないことがあります。
なぜ同じけがでも痛みの強さが違うの?
痛みの感じ方には個人差があります。
組織の状態だけでなく、これまでの痛みの経験、睡眠、疲労、不安や恐怖、ストレスなどが痛みの感じ方に影響することがあります。
そのため、画像検査で確認された変化の程度と本人が感じる痛みの強さが必ずしも一致するとは限りません。
反対に、検査で大きな異常が見つからないからといって「痛くないはず」「気のせい」ということにもなりません。
本人が感じている痛みそのものを否定せず、その痛みにどのような要因が関係しているのかを考えることが重要です。
痛みを感じにくい人・感じやすい人がいるのはなぜ?
痛みの感じ方には個人差があるため、同じ刺激でも「かなり痛い」と感じる人もいれば、それほど強く感じない人もいます。
これは単純に「我慢強い・弱い」という性格だけで決まるものではありません。神経系の反応、過去の経験、心理状態、睡眠、体調などさまざまな要因が関係します。
また、痛みに強いことが必ずしも良いとは限りません。強い痛みを我慢し続けることで、病気やけがへの対応が遅れてしまう可能性もあります。
痛みの強さだけでなく、「いつから」「どこが」「どんなときに」「どのように痛むのか」を確認することが大切です。
毎日身体のどこかが痛いのはなぜ?
毎日身体のどこかに痛みを感じる場合、原因は一つとは限りません。
仕事やスポーツによる繰り返しの負担、同じ姿勢が続く生活、活動量の低下、けがや関節・筋肉の病気、神経に関係する病気など、さまざまな原因が考えられます。
さらに、長期間痛みが続いている場合には、睡眠不足、疲労、ストレス、不安などが痛みの感じ方に影響していることもあります。
「毎日どこかが痛い=老化」「身体が歪んでいる」と一つの原因に決めつけず、症状が続いている場合には一度医療機関で原因を確認することが大切です。
年齢とともに身体が痛くなりやすいのはなぜ?
年齢を重ねると筋肉量や骨量、関節など身体にはさまざまな変化が起こります。また、変形性関節症や骨粗しょう症などの病気が増えてくる年代でもあります。
ただし「年を取ったから痛いのは仕方がない」と考える必要はありません。
年齢が同じでも身体の状態や活動量、病気の有無などは人によって異なります。痛みの原因をすべて加齢のせいにしてしまうと、本来確認すべき病気やけがを見逃す可能性があります。
新しく痛みが出た、以前とは違う痛みがある、徐々に悪化しているといった場合には、年齢だけを理由にせず原因を確認しましょう。
仕事や生活習慣も身体の痛みに関係する?
身体へ繰り返し負担がかかる仕事やスポーツなどは、筋肉や関節の症状に関係することがあります。
立ち仕事、重量物を扱う仕事、長時間のデスクワーク、同じ動作を何度も繰り返す作業などでは、特定の部位へ負担が集中する場合があります。
一方、「姿勢が悪いから必ず痛くなる」「座っている時間が長ければ必ず腰痛になる」という単純なものでもありません。
長時間同じ状態が続く場合には、ときどき姿勢を変える、無理のない範囲で身体を動かす、仕事量や休憩の取り方を見直すなど、自分の生活に合わせて負担を調整することが大切です。
急性の痛みと慢性の痛みは何が違う?
急性の痛みは、けがや炎症などに伴って生じ、身体を守るための警告として働くことが多い痛みです。
一方、慢性疼痛は一般的に3か月以上続く痛みとして扱われ、組織の状態だけでなく神経系の変化や睡眠、心理・社会的な要因など複数の要素が関係することがあります。
そのため慢性疼痛では「痛いところだけを治せば終わり」とならない場合があります。
痛みの軽減だけでなく、睡眠、活動量、仕事や家事、趣味など、痛みによって制限されている生活を少しずつ取り戻していくことも重要になります。
身体が痛いときは動かない方がいい?
痛みがあるからといって、すべての場合で安静にし続ける必要があるわけではありません。
骨折など安静や固定が必要なけがもあれば、長期間動かないことで筋力や体力が低下してしまう場合もあります。
特に長引く筋骨格系の痛みでは、原因や状態を確認したうえで、可能な範囲から日常生活や運動を続けていくことが大切になる場合があります。
反対に、強い痛みを我慢して無理に運動すればよいということでもありません。痛みの原因と身体の状態に合わせて判断することが重要です。
身体の痛みは放置しても大丈夫?
軽い痛みが一時的に出て自然に落ち着くこともありますが、すべての痛みを放置してよいわけではありません。
特に、痛みが徐々に強くなる、長期間続く、何度も繰り返す、しびれや筋力低下を伴う、日常生活に支障が出ているといった場合には、一度医療機関へ相談しましょう。
「痛みを我慢すると必ず慢性化する」というわけではありませんが、原因が分からない状態で長期間我慢し続けることもおすすめできません。
こんな痛みは早めに医療機関へ
身体の痛みの中には緊急性の高い病気が隠れている場合があります。
突然経験したことのないような激しい頭痛が出た、胸や背中に突然激しい痛みが出た、胸が締め付けられる・圧迫されるように痛む、急な息切れや呼吸困難がある、突然激しい腹痛が出た、突然片方の腕や脚に力が入らなくなった、といった場合には緊急の対応が必要になることがあります。
このような症状では、整体やセルフケアで様子を見るのではなく、速やかに医療機関を受診してください。緊急性が高い場合は119番への連絡が必要です。厚生労働省もこれらを救急車を呼ぶ目安として案内しています。かかり方サイト
よくある質問
身体の痛みの原因は何ですか?
けがや炎症、関節や筋肉の病気、神経に関係する病気などさまざまです。長引く痛みでは、神経系の変化や睡眠、ストレス、不安など複数の要因が痛みの感じ方に関係することもあります。
毎日身体のどこかが痛いのは病気ですか?
毎日痛みがあるからといって特定の病気とは限りません。ただし、長期間続く、徐々に悪化する、複数の場所に強い痛みがある、しびれや筋力低下などを伴う場合には医療機関で相談してください。
痛みを感じにくい人には特徴がありますか?
痛みの感じ方には個人差があります。神経系の反応、過去の経験、心理状態、睡眠、体調などさまざまな要因が関係するため、単純に我慢強さだけで決まるものではありません。
検査で異常がなくても身体が痛いことはありますか?
あります。画像検査などで大きな異常が確認されなくても痛みが存在することはあります。痛みと画像上の変化が必ずしも一致するとは限らないため、症状の経過や身体の状態などを含めて考えることが大切です。
ストレスで身体の痛みが強くなることはありますか?
あります。不安やストレス、睡眠不足などは痛みの感じ方に影響することがあります。ただし、痛みをすべてストレスのせいにするのではなく、必要に応じて身体的な原因についても確認することが重要です。
身体が痛いときは安静にした方がいいですか?
原因によって異なります。安静や固定が必要なけがもありますが、長期間動かないことで筋力や体力が低下する場合もあります。原因や身体の状態に合わせて活動量を調整することが大切です。
どんな痛みならすぐに病院へ行った方がいいですか?
突然の激しい頭痛、胸や背中の突然の激痛、胸の圧迫感、急な息切れや呼吸困難、突然の激しい腹痛、突然片方の腕や脚に力が入らないなどの症状は緊急性が高い場合があります。速やかに医療機関へ相談し、緊急性が高い場合は119番へ連絡してください。
まとめ
身体の痛みは、単純に「痛い場所が壊れているから」だけで起こるものではありません。けがや炎症、神経の病変・疾患などに加え、長引く痛みでは痛みを処理する神経系の変化や睡眠、ストレス、不安など、さまざまな要因が関係することがあります。
また、検査で大きな異常が見つからなくても、本人が感じている痛みが存在しないという意味ではありません。反対に「いつもの痛みだから」と考えて重大な症状を見逃さないことも重要です。
毎日身体のどこかが痛い、痛みが長期間続いている、以前より悪化している、生活に支障が出ている場合には、自己判断だけで済ませず医療機関で原因を確認しましょう。

