『シンスプリント』とは、すねの内側の真ん中あたりから下に向けて、鈍くうずくようなズキズキしたような痛みを感じるスポーツ障害の1つです。
脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)とも言い、オーバーユース、つまり筋肉の使い過ぎによって起こる筋膜の炎症です。
シンスプリントは、早期発見・早期治療を行うことでしっかりと改善することができます。
シンスプリントの症状
- すねの内側の下の方に痛みを感じる
- 激痛ではないが、うずくような鈍い痛みを感じる
- 初期は、運動し始めに痛みを感じ徐々に軽快する
- 進行すると何もしていなくても痛みを感じる
シンスプリントの症状は、始めのうちは鈍い痛みがすね(脛骨)の内側1/3より下の方に出現します。
はじめのうちは我慢できないほどの痛みではなく、痛むタイミングも運動の始めや運動後に一時的に出現する程度で、少し安静にしていると痛みがすぐに消失する場合が多いです。
しかし、次第に痛む時間が長くなり、運動中や安静時にも痛みが出現するようになります。
重症化すると、痛みで歩くことすら困難になってしまい、運動どころではなくなってしまう人もいます。
シンスプリントの原因
シンスプリントになりやすい人の特徴
- スポーツをしている人(特に運動量や瞬発力が多く必要な競技)
- 中学、高校で部活の練習量が急激に増えた人(特に新人選手)
- 久しぶりに運動を再開した大人
- 扁平足をはじめとした足の形が崩れている人
シンスプリントが起こりやすい主なスポーツ
- 陸上競技
- バスケットボール
- バレーボール
- サッカー など
主にジャンプやダッシュを繰り返し行うようなスポーツで、活動量が多く瞬発力を必要とする競技に多く発症しています。
特にランナーは他のスポーツに比べ発生頻度が高く、約半数の人がシンスプリントを発生すると言われています。
その他のスポーツでは、新人選手など運動をし始めたばかり人が頑張り過ぎる傾向があり運動量が多くなるために、シンスプリントを起こしやすい傾向があるようです。
また、近年ではチアリーディング競技者などの発症も多くみられるようになってきました。
シンスプリントになりやすい身体的特徴
- O脚
- 回内足
- 偏平足
- 下肢の筋力不足
- 筋肉の柔軟性不足 など
生まれつき足の形が崩れている人は、足の関節や筋肉に負担がかかりやすいため、足の疲労による柔軟性の低下や関節の衝撃緩衝能力の低下によってシンスプリントを起こしやすいと考えられます。
その他の要因
- 地面が硬いことによる負担
- 負担のかかりやすいランニングフォーム
- 足に合わない靴
- シューズの劣化
足の形に合っていないシューズや、靴底の薄いシューズは足に負担がかかりやすいです。
また、履きはじめは足に合っていたシューズでも、使っていくうちに靴底がすり減ってしまうことで足への負担が大きくなり、シンスプリントを発生させる要因となることもあるのでこまめな点検が必要です。
好発年齢と男女差
シンスプリントは大人にでも起こる障害ですが、通常、大人に起こることは稀で、症状を訴えるほとんどが中高生などの若い世代です。
男女差では、女性は男性より比較的早期に発症しやすい傾向があります。
また、男性に比べ女性の方が、1.5~3倍程度シンスプリントの症状が発生しやすい傾向にあります。
これは、男女による筋肉量に違いがあると考えられます。
シンスプリントの診断
シンスプリントは『筋膜の炎症』によって起こる障害であるため基本的にレントゲン画像には写りません。もしも、レントゲンで確認できる状態であれば、シンスプリントの影響が骨まで及んでいることになり、それはかなり症状が悪化している状態と言えます。
確実に診断するためにはMRI検査を行う必要がありますが、レントゲン検査で骨折がないことが確認できれば痛みに対する治療内容はそう変わらないので、焦って確定診断する必要はありません。
運動を休む期間
運動を休止する期間は、症状が軽い場合は2週間程度、重症の場合は2~3か月が目安です。
1、運動後にのみ痛みがあらわれる場合
特に運動を休止する必要はありませんが、酷くならないよう早めの対処が必要です。
2、運動時にのみ痛みを感じる場合
運動量を減らします。特にふくらはぎに負担がかかるような運動は避けます。
3、歩くだけでも痛みがある場合
ふくらはぎに炎症がかなり広がっているため運動を休止し安静にして過ごす必要があります。
治療期間の目安
シンスプリントの程度にもよりますが、治療期間の目安は1ヶ月程度です。
運動禁止を守っていただければ初期段階であれば1~2週間程度で痛みは消失します。
痛みが消失したからと言ってシンスプリントが改善したわけではないと言うことを覚えておきましょう
痛みが消失してからが治療の本番です。硬くなった筋肉や筋膜をほぐしたり、関節の可動域を正常な状態に整え、再び痛みがあらわれないよう施術していきます。
運動禁止ができないまたは、状態がより重症な場合は治療期間が3か月~それ以上かかる場合もあります。
疲労骨折との違いについて
シンスプリントと似たような症状に『疲労骨折』があります。
疲労骨折もまたスポーツを頑張り過ぎる人に起きる障害の一つですが、シンスプリントの原因が『筋膜の炎症』に対して、疲労骨折は『骨にひびが入ってしまう』状態です。疲労骨折は『骨折』してはいるものの初期段階では歩けないほどの激痛ではないケースもあり、専門家でも画像検査しなければ分からない場合もあります。
適切な治療を続けていても、思うように症状が回復しない場合は疲労骨折を疑って一度検査してみるのも良いでしょう。
運動を再開するタイミング
程度によりますが2週間ほどで運動を再開することが可能になります。
『何もしていなければ痛くない!』と思えるくらいになったら運動を徐々に再開していきます。
まずは軽いウォーキングから始め、痛みがあらわれなければ両足で軽くジャンプしてみます。ジャンプが痛くなければランニングや階段などに挑戦し、徐々に負荷を強くしていきます。
早く復帰したい気持ちは分かりますが、痛みがあることをごまかして運動を再開してしまうと症状が長引くことが考えられます。中途半端に運動再開してしまうよりもしっかり休んだ方が症状の回復が早く、しっかり治すことができるので、症状がある時は無理せず休むこともトレーニングと思って頑張って乗り切りましょう。
シンスプリントを予防しよう
シンスプリントを予防するためには筋肉や関節が柔らかいことが大切です。
筋肉や筋膜が硬いことによって、ふくらはぎに余計な負荷がかかりシンスプリントが起こります。
シンスプリントが起こらないように普段から以下のポイントに気を付けてケアしていきましょう。
セルフケアのポイント
- 運動後痛みや腫れ、違和感がある場合は冷やす
- ふくらはぎの筋肉や腱を柔らかくするストレッチを行う
- 股関節や膝関節、足首などの動きを整え柔軟性を保つ
- 足裏をほぐす&鍛える
普段から身体を使った後にアイシングやストレッチを行うことはもちろんですが、筋肉の柔軟性だけではなく関節や身体全体の柔軟性を保つことも大切です。
運動前のウォーミングアップは必須
ウォーミングアップをして、筋肉を温め血流を良くしておくことで運動時、ふくらはぎの筋肉に負担がかかりにくくなります。筋肉は温まっていると柔軟性があがり、冷えていると硬いため衝撃を受けやすいので、必ず運動前にはウォーミングアップを行いましょう。
無理なストレッチは筋肉をさらに硬くする
運動後時間を置かずににストレッチを行うことで、運動によって緊張した筋肉をゆるめ、血液の流れを整えられるので、筋肉に疲労を溜めずに済みます。
しかし、いくらストレッチが良いからと言って、痛みに耐えながら無理やり行ってしまうと筋肉を傷つけてしまうため逆効果です。
ストレッチは「気持ちがいい」と感じるくらいの強さが効果的です。それ以上伸ばしてしまうと筋肉が緊張してしまい逆に筋肉を硬くしてしまう可能性があるのでやめましょう。
アイシングのし過ぎは筋肉を硬くする
炎症がある場合アイシングは効果的ですが、冷やし過ぎはかえって筋肉を硬くしてしまう可能性があるので注意が必要です。
アイシングは本来、使い過ぎて炎症した筋肉を落ちつかせるために行うのですが、アイシングすることによる※反熱反応を起こすことを目的としています。
(※反熱反応…一時的に冷やすことによってアイシングをやめた後温かくなって血流が良くなる身体の反射反応)
痛みや腫れがある部分をアイシングすることで、これ以上痛みが広がらないよう抑えることが目的ですが、一時的に血流を妨げてしまいます。
ケガを早く治すためには血流が良い方が回復が早いことを考えると、実は身体は温めた方が回復は早いのです。しかし、ズキズキ痛みがある場所を温めると血行が良くなりさらに痛みが増してしまうため、まずはアイシングをして痛みを落ち着かせます。
アイシングし過ぎることによって血流が悪くなり筋肉が硬くなってしまうため、冷やし過ぎには気を付けましょう。
足裏のアーチを鍛えるエクササイズ
足裏のアーチを鍛えることで着地の際の負担を軽くします。
足指のエクササイズ
- 床にタオルを置いて準備します
- 両足の指全部を使ってタオルを引き寄せます
- 左右の足裏をバランス良く使うのがコツです
- 引き寄せたり、掴んだまま数秒キープしたりを繰り返し行いましょう
『鍼灸整骨院かまたき』でのシンスプリント治療
- 手技療法
- 骨格や関節の調整
- 電気療法
- 鍼治療
- 筋力トレーニング・ストレッチ療法
- テーピング・サポーター
- 鎮静剤や湿布
- インソール(足底板)の着用
これらの方法をシンスプリントの状態に合わせて行っていきます。
痛みがある部位に対する施術を行うことはもちろん、身体全体のバランスをみて下半身中心に施術していきます。
足裏、足首、太もも、股関節、骨盤のバランスを整え、全体的に筋肉の柔軟性を高めていきます。
電気療法
痛みが強いときに、直接患部を押したり引っ張っるなどして施術してしまうと傷ついた筋肉がさらに炎症してしまう可能性があります。そのような場合に電気療法は有効です。
人間の身体のなかに流れている『生体電流』とよく似た電気を流すことで、炎症した筋肉の痛みを落ち着かせます。
マイクロカレント電流の効果
ごく微弱な電流です。低周波の100万分の1程度の強さです。
人間の身体は、細胞が傷ついたとき体の中に『損傷電流』という微弱な電流を流し細胞を修復をします。マイクロカレントを使うことで、この損傷電流に良く似た電流を流し、細胞の修復を早めます。
マイクロカレントは、低周波特有のピリピリとした刺激が少なく、筋肉や神経を刺激しません。そのため筋肉が興奮して痛みが増すことがないため、炎症した筋肉の治療に非常に有効です。
鍼治療
筋肉のハリや硬さが強い場合、鍼治療は有効です。
シンスプリントのように筋肉や筋膜が硬くなっている場合、グリグリと患部をもみほぐすような施術は痛みを伴い、余計に患部に負担をかけることが考えられます。
その点、鍼灸治療で使う鍼の穴は非常に小さいため、筋肉に負担をかけることなくより奥の筋肉までアプローチし筋肉の緊張を取ることができます。
また、鍼の効能としてツボを用いることで痛みが起きている神経の信号を遮断する効果もあります。
手技療法
炎症が強い場合、患部を直接施術したりはせず、まずは患部と関連のある周りの筋肉や関節にアプローチすることで周辺の血液やリンパの流れを改善し、患部の炎症を和らげます。
シンスプリントの改善には筋肉の柔軟性を上げることと、関節の可動域を広げることが重要です。
併せて、しなやかな筋肉を作るための筋力トレーニングやストレッチ療法も取り入れていきます。
また、足首や膝、股関節などの骨格を調整し身体のバランスを整えることで、すねやふくらはぎの負担を軽減させます。
まとめ
シンスプリントは軽いものであれば自然に回復する人もいます。
しかし、無理をし過ぎてこじらせてしまうと完治まで時間がかかったり、慢性的な痛みに繋がってしまう可能性もあるので、違和感に気が付いたら早めに対処しましょう。
シンスプリントにならないために日頃からセルフケアすることは大切ですが、痛みや違和感を感じた場合は、自己判断せず、まずは専門家に相談しましょう。