
一度の衝撃や転倒により骨に外力が加わりポキッと折れてしまう通常の骨折とは違い、一度の力では折れない程度の力が同じ部位に繰り返し加わることによって発生する骨折を疲労骨折と言います。
特に、ランニングやジャンプなど繰り返し動作の多い陸上競技を行うスポーツ選手に多く発生することから、スポーツ障害の1つと認識されています。
ここでは、疲労骨折の原因や症状、対処法などについて解説していきます。
疲労骨折とは?
骨折とは、何らかの衝撃が骨に加わり骨が折れてしまうことです。
骨折と聞くと、ぶつかったり転んだりした衝撃により骨がポキッと折れる『外傷骨折』を想像する人が多いと思いますが、疲労骨折は一度にかかる負荷は小さいものの同じ部位に繰り返し力が加わることで骨が耐え切れなくなり、骨がはがれたりひび割れたりすることをあらわします。
特に、陸上競技を行っているスポーツ選手に多く、初期症状では軽い捻挫程度の痛みであるため我慢して競技を続けてしまう選手も多く、発見が遅れてしまいがちです。
痛みを我慢し運動を続けると通常の骨折に至ってしまうこともあります。しかし、早期発見により適切な処置さえ行うことができれば重症化を防ぐことができます。
疲労骨折の痛み
- 特定の動きをしたときだけ
- 特定の場所を圧迫したときだけ
疲労骨折は骨折という言葉が入っていますが、通常の骨折と違いほとんどの場合大きな腫れや皮下出血が見当たりません。
また、常に痛みがあるわけではなく、初期段階では運動時や、患部を圧迫したときなど限定的な場面でのみ痛みを感じ、安静にしていれば痛みは軽減していることが多いです。
ケガをした覚えがないのに限定的な場面でのみ痛みを感じるようなときは疲労骨折を疑ってみましょう。
疲労骨折の診断
初期の疲労骨折は、レントゲン検査では明らかな骨の異常や骨折線が見当たらないことが多いです。
レントゲン画像で確認が難しいものはMRI検査を行う場合もあります。
その他、画像検査で判断しにくい疲労骨折が疑われる症状は、触診や痛みの発生状況などによって診断します。
疲労骨折の好発年齢と男女差
疲労骨折はあらゆる年齢で発生しますが、特に骨や筋肉の発達が著しい成長期の選手に多く、ピークは15~17歳ころになります。
男女差としては、男性に比べ女性の選手に多い傾向があります。これは、女性は男性に比べ筋肉量が少なく骨も弱いため、疲労骨折発生のリスクが高いのではないかと考えられます。
また、女性選手では、無月経や摂食障害を伴う場合に骨密度が下がり疲労骨折を繰り返してしまうことがあります。
疲労骨折の好発部位
◎足の甲 (中足骨 ちゅうそくこつ)
◎すねの内側 (脛骨 けいこつ)
◎すねの外側 (腓骨 ひこつ)
疲労骨折は下肢の骨に発生することが圧倒的に多く、全体の7割以上を占めます。
その他、野球ではひじ、ゴルフでは肋骨、その他、手首や腰骨などあらゆる場所で発生します。
疲労骨折を引き起こす主な原因
- 筋力不足
- 身体の柔軟性不足
- 体幹の弱さやバランスの悪さ
- 栄養不足
- オーバートレーニング
- フロアが固すぎたり柔らか過ぎるなど、運動する環境の問題
- シューズが足に合っていない
- 未熟な運動技術 など
早いスピードやジャンプの繰り返し、切り返しの多い動作などによって、ある一定の部位に負荷がかかり続けることで発症します。
疲労骨折のリスクは陸上競技の選手に多いですが、どんなスポーツをしている人でもリスクはあります。
特に短期的に集中してトレーニングを行うことで発生するケースが多くみられます。
疲労骨折が発生しやすいスポーツ
マラソンをはじめとする陸上競技が最も多く、次いでバスケットボールやサッカー、ラグビーなど素早い動きが求められる競技や、ジャンプやつま先立ちが多いバレエダンサーや新体操選手に多い傾向があります。
疲労骨折の対処法
- 疲労骨折は通常の骨折と違い、突然動けなくなるわけではないので我慢して動き続けてしまうかもしれませんが、運動時のみ痛みを感じるなと気が付いたらまずは、すぐに運動を中止して安静を保つことが大切です。
骨折の程度にもよりますが、軽いものであれば通常1~2か月の運動の禁止と安静が必要です。 - 疲労骨折は通常、ギプスや装具などによる固定は行いません。
- 基本的には患部に負担がかからない程度であれば、筋トレなど他のパーツを鍛えるための運動を行うことは問題ありません。
- 痛みがあるときは患部をよく冷やし炎症を抑えることで症状が軽減します。
- 電気療法や物理療法を行うことで症状の進行を抑えたり回復を早めたりすることができます。
疲労骨折が再発しやすい理由
疲労骨折は運動再開後すぐに再発してしまうことは珍しい事ではありません。
これはなぜかと言うと、安静にしていただけで根本的な治療を行っていないからです。
- 痛み止めを飲む
- 湿布を貼る
- 痛みがある場所の周りを軽く伸ばしたり揉んだりする
- サポーターなどで簡易的に固定する
- 運動を禁止し安静にする
これらは全て治療ではなく、痛みが引くのを待っているだけの状態です。
長い間運動を禁止にしていても、再開後また同じようなやり方をすることで再発してしまうのは当然の結果です。
運動禁止の期間に適切な施術を行い、再発のない身体づくりをする必要があります
疲労骨折の予防で心掛けること
- 練習量を見直す(減らす)
- 睡眠時間の確保をはじめ、休息をしっかりとる
- 筋肉を鍛える
- 身体の柔軟性を上げる
- 栄養をしっかり摂る
疲労骨折の一番の原因はオーバートレーニング、つまり使い過ぎです。
まずは、練習量や練習による負荷を見直しましょう。
次いで、十分な睡眠時間を確保しましょう。成長期の身体は休息がとても大切です。
その他、ストレッチや筋トレなど基本的なトレーニングをしっかり行いましょう。筋肉が柔らかいことでケガを防ぐ効果があります。筋トレを行う場合には、はじめから負担が大きいトレーニングはケガに繋がる可能性があるため避けましょう。負荷は徐々に上げていくことで丈夫でしなやかな筋肉が作られます。
また、女性に多い疲労骨折の原因として栄養不足があります。女性は体重を気にするあまり、必要なエネルギーを摂取せず、エネルギー不足に陥りがちです。特に女性は月経により栄養が失われる機会も多いため注意が必要です。
エネルギーが不足した状態で運動を続けていると疲労骨折のリスクも高くなることを覚えておきましょう。
最後に、再発を防ぐために必ず見直したいのがフォームの改善です。
運動を再開した後同じフォームのまま続けてしまうと、再度ケガをしてしまう可能性が大きいです。
動きの研究をしたりコーチと相談して、身体にかかる負荷を最小限に抑えるフォームを見つけましょう。
『鍼灸整骨院かまたき』で行う疲労骨折の治療
ここまで疲労骨折のことを西洋医学的な見解で色々書きましたが、私は、疲労骨折は適切な施術により長期間休まずに運動を再開することができると考えています。
なぜかと言うと、激痛や患部の腫れがないごくわずかな疲労骨折は、いわゆる骨折ではないと考えているからです。
レントゲン画像を確認したとき、明らかにポキッと折れているものは別ですが、レントゲンには写らない、または写っていたとしてもモヤッとした影があ写る程度のものは、疲労骨折の疑いがあるだけで、実際に骨折しているか判断がつきません。
しかし私は、疲労骨折と言われているものの多くが骨が折れているわけではなく、骨に付いている薄い骨膜が炎症している状態、または、骨が歪んで炎症が起きている状態だと考えています。
つまり、適切な治療を行うことで長期間安静にしなくても回復できると考えています。
疲労骨折の治療
整形外科の先生と真逆のことを言ってしまうかもしれませんが、疲労骨折の回復を早めたいなら適度に身体を動かすことです。
人間の身体には本来、自然治癒力が備わっています。自然治癒力とは、風邪を引いたときやケガをしたとき、自らの力で回復しようとする力です。骨も同様に自己再生能力があります。
つまり、疲労骨折を自分の力で修復しようとする力を最大限に引き出してあげることで早期回復を可能にします。
以上のことから、安静にし過ぎるよりも適度に動く方がより回復を早めることに繋がると言うわけです。
この時必要なのが酸素と栄養です。酸素と栄養は血液が運んできてくれます。
動くのを避けて安静にし過ぎることで血液を全身に流すポンプの役割である筋肉の働きが低下し、血液の循環が悪くなります。血液循環が悪いことで栄養と酸素が損傷した部分に運ばれにくくなり、回復機能が低下し傷の回復を遅らせることに繋がります。
疲労骨折早期回復における施術のポイントは血行促進
回復力は血液の循環が良くなることで高まるので、疲労骨折の治療では血行を良くすることが必要不可欠です。しかし、損傷した直後に血行が良くなると痛みが増してしまう可能性があります。
お勧めは電気治療
電気治療のなかでも『ハイボルト』というものは、より深部まで浸透し、痛みを伝える神経を一時的に遮断する作用がある、痛みに特化した電気刺激です。電気を流すことによって骨やその周りの筋肉に微細な振動を与え、炎症を抑えつつ痛みを改善していきます。
手技療法
整骨院の一番の特徴は手技療法です。
長年の知識と経験で筋肉の硬さや関節の硬さ、骨格のバランスの悪さを改善していきます。
筋肉や関節を押したり伸ばしたり捻ったりすることで血流を改善し、自然治癒力が高まるお手伝いをします。
再発のない身体を作る
疲労骨折は、練習のし過ぎや練習環境を除いて、身体のことだけで考えるとズバリ身体のアンバランスが原因で起こります。身体が発達段階の子供に多いのもそのためです。
痛みを抑える治療を進めつつ、以下のことを指導していきながら再発のない身体づくりを行っていきます。
筋トレ
きちんと必要な筋肉を動かせているかは筋トレにおいて非常に重要なポイントです。
筋トレの際は、しっかり骨格に体重が乗るよう身体の重心を意識して筋肉と骨に刺激を与えながら行っていきます。
柔軟・ストレッチ
どんな運動をするにも筋肉の柔らかさと関節の柔らかさは必要不可欠です。
特に股関節が硬いと全身の動きに影響を与えケガに繋がるリスクになってしまうため、しっかりとほぐして可動域を広げていきます。
体幹
体幹とは文字通り、身体の中心にあって身体を支える一番要になる筋肉です。
運動する際、骨格にくっついて一番最初に動く筋肉なので、体幹が弱ると動きが不安定になりケガのリスクも上がってしまいます。体幹を鍛えることで関節へ無駄な負担を防ぐことができます。
その他
フォームの改善や、運動前後のストレッチの習慣化も再発防止に必要になります。
フォームの改善は運動を続ける上で最も重要です。成長段階に合わせてコーチと相談して改善していきましょう。