女性の骨盤は男性の骨盤に比べ横幅が広く筋肉量も少ないため、股関節が歪みやすい傾向にあります。
股関節が歪むことで身体全体のバランスが崩れ筋肉や靭帯に余計な負担がかかります。その結果、股関節の痛みがあらわれると考えられます。
股関節は人間の関節の中で最も大きな関節で、立つ、歩く、座る、捻る、飛び跳ねるなど、身体を動かすときに要となる関節です。そのため、股関節の歪みを放置しているとやがては身体全体の不調に繋がります。
ここでは股関節の痛みについて解説するとともに、股関節の症状に対する対処法について解説していきます。
股関節が痛くなる原因
股関節痛の原因は大きく分けて2つに分類されます。
- 一次性の変形性股関節症⇒股関節を支える筋肉や靭帯が弱くなることが原因で起こるもの
- 二次性の変形性股関節症⇒生まれつきに限らず外傷や炎症など股関節の疾患により起こるもの
痛みを訴える人は女性の方が圧倒的に多く男性の7倍と言われています。
痛みの原因を調べると、日本以外の国の人では圧倒的に一次性の変形性股関節症が多いのに対し、日本人は、一次性の変形性股関節症の割合は15%程度と少なく、二次性の変形性股関節症が全体の約80%を占めています。
1・明らかな原因がない一次性の変形性股関節症
外傷や疾病ではない股関節の症状は、一次性の変形性股関節症に分類されます。
一次性の股関節症はこれといってハッキリとした原因があるわけではなく、日常生活の中で股関節に過度な負担がかかることや、加齢による筋肉の衰えなどによって引き起こされます。
- 老化
- 体重増加
- 肉体的な過重労働
- スポーツによる過度な負荷 など
以上のようなことが要因となり一次性の変形性股関節症は引き起こされます。
2・日本人に多い二次性の変形性股関節症
二次性の変形性股関節症のうちの8割以上が『臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)』だと言われています。
臼蓋(きゅうがい)とは、股関節の動きをスムーズにするために形作られている骨盤の外側部分です。臼蓋が何らかの理由により成長せず小さいままの状態を、臼蓋形成不全と言います。
臼蓋形成不全の原因は、生まれつきや幼少期の発育不良、遺伝的要素などが考えられますが原因が分からない場合もあります。特に、日本人女性は生まれつき臼蓋が小さい人が多く、変形性股関節症になりやすいと言われています。
臼蓋形成不全の人は、股関節が不安定でグラグラしやすく、脱臼のリスクが高く、軟骨組織が傷つきやすいと言われています。
オムツが股関節の発育を妨げていた?
その他、かつてはオムツが原因で乳幼児期の股関節の発達を妨げてしまったのではないかと言われています。
昔のオムツは布で出来ていて、1枚の布で股関節を外側から締め付けるように巻いていましたが、この巻き方が股関節に負担をかけ、臼蓋形成不全を引き起こしたと考えられています。
今はオムツの機能もかなり発達しているので、今後はオムツが原因の臼蓋形成不全による股関節の症状は減っていくと考えられています。
変形性股関節症の症状
主な症状は股関節の痛みや可動域制限などの機能障害です。
症状を訴える人は中高年以降の人に多いですが、年齢に限らず若い人にも股関節の症状は起こります。
また、より股関節にかかる負荷が大きい運動をするアスリートも股関節の痛みに悩まされる人が多いです。
高齢になると股関節の痛みが慢性化してくるケースが多いですが、若い人では股関節周辺に突然ビリッとした痛みが走る程度で一時的なもので済む場合も多く、病院を受診しないままでいることも珍しくありません。
しかし、すり減って変形した軟骨は元に戻ることは無いので、若いうちは一時的な症状で済んだ人でも、歳と共に筋力が弱くなってくると軟骨のすり減りが進んでくるため、中高年になってから本格的な症状に悩まされます。
初期のうちは立ち上がるときや、歩き始めに足の付け根部分が動かしづらく少し痛みがある程度ですが、症状が進行し軟骨のすり減りが進んでくると、股関節に負担がかかるようになり、歩行に支障をきたすようになってきます。
股関節の変形が進むにつれ痛みは強くなり、何もしていないときでも常に痛みを感じるようになります。
ひどい人では夜寝ているときでも痛みに悩まされ、よく眠れず睡眠の質が落ちてしまうケースもあります。
【 初期 】
◎ 長時間の運動や歩行後に痛みや違和感を感じる
◎ 太ももお尻膝に軽い痛みや違和感、動かしにくさを感じることがある
【 進行期 】
◎ 股関節の可動域が狭くなってくる
◎ 日常的に痛みを感じる歩行に支障をきたすようになってくる
【 末期 】
◎ 何もしていないときでも常に痛い
◎ 股関節が硬くなり動きが悪くなる
◎ 足の筋力が落ち、足が細くなったり足の左右の長さが違ってくる
股関節痛を起こしやすい人の特徴
股関節の痛みは中年以降の女性が訴えるケースが多いですが、年齢や性別に関係なく誰にでも起こる症状です。
病気や疾患に関係ない股関節の痛みは、体重増加や姿勢の悪さなど、日常的に股関節に負担がかかりやすい人に起こりやすいです。
- 臼蓋形成不全など股関節の疾患をお持ちの方
- 肥満傾向の方
- 40代以降の女性
- 反り腰やガニ股など姿勢の悪い方
- O脚またはX脚など股関節がねじれている方
- スポーツによって股関節に負担がかかりやすいアスリート
- 妊娠中、または産後の女性 など
変形性股関節症の診断
股関節に痛みを感じている場合、レントゲンを撮ることで診断を確定することができます。
初期は、骨が細かったりわずかな変形程度ですが、症状が進行するにつれ、関節の隙間が狭くなったり、軟骨が薄くなったり、最終的には軟骨がなくなることもあります。末期では関節に骨棘(こつきょく)と呼ばれる異常な骨ができたり、骨に空洞ができることもあります。
変形性股関節症の治療
すり減った軟骨を元に戻したり、変形した関節の形を元の形に戻す治療は今のところありません。
股関節の症状に対してはまずは、手術を行わない保存療法を行うことが一般的です。
痛みがある時は特に、基本は股関節に負担がかからないように安静にしていることが大切ですが、股関節を動かさないように生活することは難しいので、できる範囲で生活を見直して股関節に負担をかけない運動なども行っていきます。
① 生活指導
股関節に負担がかかる生活を見直していきます。
例えば、普段の生活が床に座る生活スタイルだったら椅子に座るよう生活様式を変更します。
また、体重を管理することも大切です。少し体重が多めの場合は痩せることで股関節へかかる負担を減らすことができます。
② 運動療法
股関節に痛みがある人はウォーキングや、下半身の負荷が大きいトレーニングなど、股関節に負担がかかる運動をしてはいけません。軟骨のすり減りをさらに進行させてしまう原因になります。
股関節にかかる負担を少しでも軽くするために、股関節周辺の筋肉の柔軟性を上げる必要があります。筋肉の柔軟性を上げるにはストレッチが有効です。
ストレッチで筋肉の質を柔らかくしつつ、股関節の動きを支える、お尻や太ももなどを鍛えます。
自己流の運動は逆に股関節を痛めてしまう原因になる可能性があるのでおすすめしません。
③ 温熱療法
温めるときと冷やすときの基本は、
・ズキズキ激しい痛みは冷やす
・ズーンと重い痛みや慢性的な痛みは温めるが基本です。
よって、股関節の症状が慢性的になっていて、普段から痛みや違和感、動かしにくさを感じている場合は温めます。温めることで筋肉の血行を良くし、硬くなっている筋肉をほぐします。
反対に、急な痛みに襲われてズキズキ痛みが強い場合は、温めることで痛みが増してしまう可能性があるので冷やします。急性のズキズキした痛みが治まったら、血行をよくするために温めましょう
④ 薬物療法
股関節の骨のすり減りを止めたり、すり減った股関節を再生する薬はありません。
一般的な股関節症で使用する薬は、痛みの症状を一時的に緩和する鎮痛薬になります。鎮痛薬には患部を治す成分は含まれていません。
股関節の症状を改善するためには、運動療法や温熱療法、その他、治療院などで施術を受けましょう。
自分で出来る運動療法
自分で行う運動の基本は無理をしないことです。無理をして痛みに耐えながら運動してさらに身体を痛めてしまったらもともこもありません。
毎日の運動量は少なくても、毎日続けて行うことが大切です。
また、早く治したいからといって、一度にたくさんの運動をして身体に負担をかけるのも逆効果です。
無理のない範囲で、心地よいと思える程度で行いましょう。
太ももも前側のストレッチ
後ろ手で片足を掴んで太ももの前側の筋肉を伸ばします
膝が痛くなるような場合は無理に行わないようにしましょう
お尻のストレッチ
お尻の筋肉は大きいため、ほぐすことで股関節の動きがかなり軽くなります
無理せず、心地いいと感じる程度で行いましょう
股関節のストレッチ
股関節そのものを伸ばします
硬い人は無理せず負荷の軽い運動からゆっくり行っていきましょう
股関節周辺の筋トレ
体幹を鍛えることで身体の中心に重心がくるため股関節に無駄な負荷をかけずに済むようになります
その他、お尻や太ももの筋肉を鍛えることで骨への負担を軽減することができます
鍼灸整骨かまたきの施術
整骨院でレントゲンは撮れません
股関節の痛みを感じたらまずはレントゲンの撮れる病院へ行って検査してもらう事をお勧めします。
「整骨院でレントゲンを撮ることはできますか?」という質問をたまにされるのですが、整骨院はレントゲン技師や医師がいないのでレントゲンを撮ることはできません。
レントゲン検査を希望される場合は整形外科などの病院へ行くことをおすすめします。
もちろんレントゲン検査をせずに整骨院へ来ていただいてもかまいません。
整骨院では、お客様の身体の状態を診て、お話を伺う中で、症状を予測し、お身体の状態に合った最善の方法を検討し治療を決定していきます。ですが、もしも先に検査をしていて、診断がついていればよりなお良いです。
中にはレントゲン検査やMRI検査をしても特に異常が見当たらない股関節の症状もあります。
画像診断で異常が無かったとしても症状が出ているものに関しては治療しなければなりません。画像診断で写らない症状の多くは筋肉や靭帯に損傷がある可能性が高いです。
当院では、原因が分からない股関節の症状に対する治療も得意としていますので安心してご相談ください。
症状改善のポイントは『潤滑油』
関節の中には、関節を動かしたときスムーズな動きを可能にするための潤滑油が流れています。
潤滑油が流れることで関節の動きによって骨が、ぶつかったりこすれたりし擦り減るのを防ぎます。
何らかの理由により、潤滑油が流れなくなってしまうと関節の動きが悪くなり、ぶつかったりこすれたりして関節を傷つける原因となります。
潤滑油が流れなくなってしまう原因は、加齢、疲労、姿勢の悪さ、関節のねじれ、血行不良など様々です。
治療では、お腹や太もも、腰といった下半身にかけて硬くなり血行不良を起こしている筋肉や靭帯にアプローチし、潤滑油が関節に流れてくるお手伝いをします。
特に硬い人は『はり治療』がおすすめ
股関節の痛みや動かしにくさの他、特に股関節の開きが悪い人は全体的に股関節を支えている筋肉が硬いことが考えられます。その状態でいくら運動しても思うように筋肉が伸びず、股関節の柔軟性は上がりません。
むしろ柔軟性を上げるために無理やり筋肉を伸ばしてストレッチすることで筋肉を傷つけ、よけいに股関節を痛める可能性があります。
そこで、股関節の開きが悪い人は、より奥の筋肉まで刺激できる『はり治療』を行うことをおすすめします。
はり治療が苦手な方は、電気治療や手技治療でも対応できますので安心してください。