
現代社会において腰痛はごく一般的な問題であり、実に国民の80%が一生のうちに一度は経験すると言われています。
身体の不調に関する訴えでも男女ともに腰痛が1位を占めており、もはや国民病とも言われるほど多くの人が腰痛に悩まされています。
この記事では、腰痛の原因と症状を軽減させるためのストレッチについて解説していきます。
腰痛の主な原因
ぎっくり腰のような急性の腰痛は「ある日急に痛くなった!」と考える人が多いですが、ぶつけた・転んだ・捻ったなどのケガ以外の腰痛は、「ある日突然!」起こることはありません。
日常生活の中でじわじわと腰にかかる負担が蓄積された結果、『ある日ついに、筋肉が頑張れる許容範囲を超えてしまった』ことで腰痛が起こります。
1・姿勢の悪さによる筋肉の緊張
不適切な姿勢が続くことで腰にじわじわと負担がかかり、腰痛を引き起こします。
特に、不良姿勢になりやすいのがデスクワークでパソコンを操作する姿勢です。椅子に浅く座り背もたれにもたれてお尻が前に滑る仙骨座りや、画面を注視するために首が前に付き出たり猫背になったり、長時間椅子に座りっぱなしになることで腰に大きな負担がかかります。
これらの姿勢は座っているため、「腰に負担がかかっている」という意識が持てません。しかし、不良姿勢が続くことで腰回りの筋肉が硬くなり筋肉に必要な酸素と栄養が送られなくなるので腰痛を引き起こします。
最近ではスマートフォンを操作する姿勢も問題になっています。スマートフォンはいつでもどこでも持ち運べる手軽さから、常に画面を見ている人は多く、常にうつむいている姿勢が首肩に大きな負担をかけ、首肩の症状が腰にまで影響を及ぼします。
その他、足を組む、片足重心の立ち方、反り腰、頬杖をつく姿勢なども、筋肉を緊張させ腰痛を引き起こす原因となります。
2・運動不足による筋力の低下
筋肉は、運動による刺激を受けて筋線維の合成が促され、強く丈夫な筋肉が作られます。そのため、運動による負荷は丈夫な筋肉を作る上では欠かせません。
しかし、運動不足が続き筋肉への刺激が減ると、筋組織が合成される機会が減るため筋肉は細く弱くなります。
また、運動不足による脂肪の蓄積も筋力の低下に繋がります。
食べ物で摂取したエネルギーは活動するためのエネルギーとして筋肉に貯蓄されますが、運動不足によってエネルギーが使われなければ脂肪に変換されます。余ったエネルギーが脂肪として筋線維の中に入り込むことで筋肉の質を低下させます。
筋肉の質が低下することで腰痛を引き起こす原因になります。
3・過剰な負担や疲労の蓄積による筋肉疲労
運動による筋肉の使い過ぎや重い荷物を持ち上げることによる負担、立ちっぱなしや座りっぱなしなど長時間同じ姿勢でいることや基礎体力に見合わない過剰な運動や筋トレを行うことなど、これらの行動により筋肉に大きな負担がかかり疲労を蓄積させています。
このような時、その疲労を毎回しっかり解消できていればいいのですが、疲労が解消できなければ筋肉に疲労物質が蓄積され、腰痛を引き起こす原因となります。
そして実は、筋肉の疲労は何もしていない場合でも発生しています。活動によって意識的に筋肉を動かしていない場合でも、座っているだけ、立っているだけ、寝ているだけなどの姿勢で筋肉は常に身体を動かしたり支えるために働いています。何もしていない場合でも筋肉の状態が悪いと疲労は自然に解消されることはないため、疲労が蓄積されていき、腰痛を引き起こす原因となります。
なかなか改善しない慢性腰痛の原因
痛みの急性期は発症から3か月程度です。この期間を超えても改善されない痛みは慢性痛に分類されます。
腰痛がなかなか良くならないケースでは、以下のような理由が考えられます。
- そもそも痛みが発生する環境や姿勢などの改善がされていない
- 筋肉の硬さ、血行不良が解消されていない
- ネガティブな心理状況による神経伝達の異常
- がんや糖尿病など、その他の病気が原因である など
慢性痛の原因となるモヤモヤ血管
腰痛の原因は、腰の筋肉を損傷したことによる筋肉の炎症です。
負担に耐え切れなくなった筋肉が傷つき、患部が炎症することで痛みが発生します。
傷ついた筋肉の細胞の炎症を修復するためには、新鮮な酸素と栄養が必要です。そのため、細胞修復の段階で新しい血管(新生血管)が作られ、多くの血液を患部に集めようとします。
血管が増えること自体は、細胞を修復する上で必要なことです。
そのため通常、細胞が修復され炎症が治まったところで血管は消滅します。しかし、何らかの原因によってこの血管が残ってしまう事があります。これをモヤモヤ血管と言います。
血管が増えるだけでなぜ痛みを感じるかというと、【血管と神経】は通常セットで増えからです。余計に増えた神経によって痛みの信号が脳へ多く伝わるため痛みに過敏になってしまうのです。
自然治癒力の低下
自然治癒力には期限があると言われています。
おおむね3か月程度です。受傷後3か月の間は傷を修復しようと細胞が働くのですが、3か月以上積極的に痛みの解消に取り組まなければ自然治癒力による細胞の修復が行われなくなってしまいます。
おまけにストレスなど、心因性の痛みが加わることで慢性的な腰痛へと移行してしまいます。
ストレッチで腰痛予防
痛みや不調が発生する原因の多くは、筋肉の硬さによるものです。
そのため、ストレッチによって筋肉を柔らかくすることは腰痛発生のリスクの軽減に繋がります。
腰痛を予防するストレッチ
1. キャット・カウストレッチ
背骨の柔軟性を高め、腰の緊張を和らげるのに役立ちます。
- 四つん這いになり、手と膝を肩幅に開く
- 10秒かけて→息を吸いながら背中を反らせ、頭を持ち上げる(カウポーズ)
- 10秒かけて→息を吐きながら背中を丸め、頭を下げる(キャットポーズ)
この動作をゆっくりと10回程度行います。慣れてきたら回数を増やしていきましょう。
背中が硬い人、肩周りが硬い人、首コリが強い人ははじめのうちはうまく背中が反れなかったり、丸められなかったりしますが、少しずつでもいいので続けていきましょう。
2. ハムストリングストレッチ
ハムストリング(太ももの裏側の筋肉)を伸ばすことで、腰への負担を軽減します。
- 仰向けに寝て、片方の足裏を天井に向けるようにして上げる
- 上げた足のつま先をつかみ、なるべく膝裏が伸びるように真っすぐ上に伸ばす
呼吸を止めないようにゆっくり息をしながら約30秒。終わったら反対側も同様に行う
腰や太もも裏、ふくらはぎの筋肉が硬い人ははじめのうちは、膝がしっかり伸ばせないかもしれませんがコツコツ続けましょう。
3. チャイルドポーズ
背中全体をリラックスさせ、腰の緊張を和らげます。
- 足の親指が重ならないように正座をする
- 両手を前に伸ばし、息を吐きながら骨盤から倒れるイメージで手を前に滑らせるように上半身を倒す
- 背中を軽く丸め、肩の力が抜け、おでこが床に付くようなイメージ
身体の重さを感じながらリラックスして、呼吸を止めない。1分ほどこの状態をキープする
お尻はかかとにくっついているのが理想ですが、股関節が硬い方や背中が硬い方ははじめのうちはくっつかないこともありますが、続けているうちに良い形に近づいてきます。
4. 膝を胸に引き寄せるストレッチ
筋肉を緩め腰の柔軟性を高めます。反り腰の人には特におすすめです。
- 仰向けに寝た状態で両膝を抱え、胸に引き寄せる
- 呼吸を止めずにこの姿勢を30秒キープ
背中が反らないようにお腹に力を入れて床に背中を押しあてるイメージで行います
首をやや持ち上げおへそを見るようなイメージで行うと良いです。股関節が硬い人は、はじめのうちは膝を抱えるのが難しいかと思います。その場合は股関節のストレッチを良く行うようにしましょう。
腰痛予防のポイント
毎日のストレッチ以外にも、日常生活では以下のポイントを意識して生活することで腰痛を予防することができます。
- 正しい姿勢を保つ
- 長時間同じ姿勢をとらない
- 急な動作はなるべく避ける
- 十分な睡眠をとる など
1・正しい姿勢を保つ
正しい姿勢とは、『骨盤を立てて背筋を伸ばし腹筋に力を入れている』姿勢です。
慢性的に腰痛を患っている人は、猫背や巻き肩、反り腰の人が多く、腹筋や背筋が正しく使われていません。
そのため、背筋を使って肩を開き、下腹部に力を入れ、しっかり腹筋を使った姿勢を維持することが大切です。
普段から姿勢が悪い人の多くは、正しい姿勢を維持するための筋肉が足りないので積極的に筋トレを行いましょう。
2・長時間同じ姿勢をとらない
デスクワークや立ちっぱなしの仕事、車の長時間運転やテレビの長時間視聴などで、長い時間同じ姿勢を続けると筋肉が硬くなって腰痛が起こりやすくなります。
筋肉が硬くならないように長時間同じ姿勢をとり続けないことが大切です。
理想は、30分置きに立ったり座ったりと姿勢を変えることです。屈伸をしたり足首を回すなども良いです。血液の循環が良くなります。最低でも1時間に1回は姿勢を変化させるように心がけましょう。
また、水分が不足していると血液がドロドロになり腰痛の原因になるので、まめに水分補給も行うことで体内の循環が良くなります。
3・急な動作はなるべく避ける
急な動きは筋肉に大きな負荷をかけます。
動くときや物を持ち運ぶときは、膝を使うことで腰にかかる負担を分散させることができます。重い荷物は特に身体に密着させた方が負荷が軽減します。
また、寝起きに痛みを感じる人は、身体を起こす前に一度膝を抱きかかえるようにして腰を思いっきり丸めてから起き上がると良いです。
4・十分な睡眠をとる
睡眠不足や睡眠の質が低いと腰痛のリスクが上がることが分かっています。
睡眠不足によって筋肉は緊張し炎症が起こりやすくなります。また、痛みに対する感覚も平常時より過敏になるので痛みを感じやすくなります。
他には、眠りが浅いことで寝返りの回数が増え、腰にかかる負担が増えます。
質の良い睡眠をとるために、就寝の2時間前までには入浴を済ませ、寝る前に軽いストレッチなどを行うと良いでしょう。
腰痛に関する注意点
ストレッチや生活習慣の改善が腰痛の予防・軽減に効果的ですが、症状が長引く場合や痛みが強い場合は、鍼灸整骨院かまたきにご相談下さい。無理にストレッチを行うと、かえって痛みを悪化させる可能性があるため、自己判断で行う際は注意が必要です。
また、急性の腰痛(ギックリ腰など)の場合は、まず安静にし、炎症が治まってからストレッチを始めることが推奨されます。炎症がある状態での運動やストレッチは、症状を悪化させるリスクがあります。