腰痛予防のために『ストレッチがいい』と聞き、雑誌やYouTubeなどで紹介されているストレッチを試したところ「痛みが増してしまった!!」と言う経験はないでしょうか?
このとき、痛みが増してしまった原因はストレッチなのでしょうか?
ここでは、そんな腰痛とストレッチの関係について解説していきたいと思います。
症状に合っていないストレッチは身体を痛める原因
当然のことですが、腰を痛めている時に無理やり伸ばしたり捻ったりするような動作を行うと悪化します。
腰痛が起っこているとき腰の筋肉は炎症している状態です。
そんな時、回復を早めようと焦ってストレッチを行ってしまうと腰に無理な力が加わり、さらに筋肉に負担がかかり炎症を強くする原因になります。
したがって、痛みの強いときは『安静にして過ごす』が基本です。
しかし、腰痛を繰り返す方が、痛みがないときに予防のために日頃から行うストレッチは大変有効です。
そして、一言でストレッチと言っても色々な方法があるため、腰痛持ちの方が行うことで腰に良いストレッチと、やり方によっては腰を痛める可能性のあるストレッチがあります。
腰メインのストレッチだけでは腰に負担がかかる
腰痛持ちの方は、股関節・太もも・ふくらはぎ・背中など、腰ではない筋肉が硬いことが多く、それらが硬いために腰を動かす際、腰に必要以上の負担がかかってしまいます。
例えば、しゃがんで物を持ち上げる際、膝や股関節を曲げてしゃがみ、物を持ち上げます。しゃがむことで物の重さを腰だけにかけず、膝や股関節などにも分散させるのです。
しかし、腰以外の筋肉が硬くなっていることで筋肉が十分に働けず、結果、腰だけに負担がかかってしまいます。
そうして、問題の腰をどうにか治そうとがむしゃらに腰メインのストレッチばかりを行ってしまうと、負担のかかる腰にさらにムチを打つ状態になるため腰痛を悪化させる原因となります。
腰に負担がかかるストレッチはどんなもの?
腰痛の症状によって負担のかかる動作が違います。
腰痛予防のためにストレッチを行う際は、まずは自分の腰痛の症状を把握することです。腰痛の状態を知らずに合わないストレッチを行うことは腰痛の悪化につながります。
病院で検査など行い診断を受けたことがある方は以下の内容を参考にしてください。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアがある方は腰を曲げる動作を行うことで症状が悪化するため、腰を曲げるストレッチはしてはいけません。知らずに腰を曲げるストレッチを行ってしまうと、より症状が悪化することが考えられます。
脊柱柱管狭窄症・腰椎すべり症
脊柱柱管狭窄症と腰椎すべり症と診断された方は腰を反らすようなストレッチをしてはいけません。どちらの病気も腰を反らせることで神経の通り道が狭くなったり、関節への負担が強くなり痛みに繋がる可能性が高いです。
その他の症状
梨状筋症候群や坐骨神経痛などの症状は腰だけでなく太ももや足先など広範囲に症状があらわれることが多いです。そのため、腰や太もも、ふくらはぎなどをまんべんなくストレッチすることが理想ですが、ストレッチをしていて痛みが強くなったり、しびれが出てきたり、力が入らなくなるなどの症状を感じる場合は危険です。特に痺れが出たり力が入らなくなるなどの症状があらわれた場合、神経の通り道を塞いでしまっている可能性があるため中止にしましょう。
腰痛予防にはストレッチと筋トレ両方をバランスよく行う
腰痛が起こらない良い筋肉とは、柔らかさと硬さの両方をバランスよく兼ねそろえていなければなりません。
どちらか一方だけでは筋肉が働くためには不十分です。
筋肉の特性を知って正しいストレッチと筋トレを行いましょう。
【筋肉の特性】
筋肉は縮んでいるとき力を発揮する特性があります。
腰が丸まっている場合、身体の前側の筋肉が力を発揮して負担がかかり、背中の筋肉が弱い状態です。身体の内側の筋肉を伸ばし筋肉をリラックスさせつつ、背中の筋肉を鍛えます。
反対に腰が反っている場合、背中の筋肉が縮まり力を発揮し、お腹側の筋肉が弱い状態です。そのため、背中の筋肉を伸ばして、お腹の筋トレを行います。
腰の痛みチェック
いよいよ腰痛の種類別に症状に合ったストレッチをご紹介します。
以下の動作の中で最も痛いと感じる動きはどの動きですか?
当てはまった数字によってストレッチと筋トレを紹介します。複数当てはまってしまう方はそれぞれできる範囲で行ってください。
- 身体を前に曲げる動き
- 身体を後ろに反らす動き
- 左右に捻じると痛む
- 身体を横に倒したとき動きで痛む
- ①②③④以外で腰の痛みを感じる
- じっとしてて痛む
痛み別!腰痛予防体操
どんな動きで腰痛を感じるかがわかりましたか?
複合的に痛みを感じる方は、取り組みやすい運動をできる範囲で組み合わせて行ってみてください。
① 身体を前に曲げると痛い
身体を前に曲げると腰痛が起こる人は、痛い腰をフォローしようと背中が反っている方が多く、身体の後ろ側の疲労が大きいです。このタイプの方は、後ろ側を伸ばし、前側を筋トレで鍛えます。
太ももの裏伸ばし
- 仰向けに寝て、片方の足を真上に上げる
- 上げた足を両手で掴み身体の方へ引き寄せる
- 息は止めずに片足30秒程度行う
【ポイント】
・上げた足の膝が曲がらないよう注意する
背筋のストレッチ
- 四つん這いになり、ゆっくりと息を吐きながら背中を高く持ち上げるイメージで丸める
- ゆっくり息を吸いながらお尻を突き出すように背中を十分に反らす
- ①②を順番に5~10回繰り返す
【悪い例】 お尻が下がっていると背中のストレッチ効果が半減してしまうので注意
ドローインでお腹の筋トレ
- 仰向けになり膝を立てる
- 大きく息を吐きながらお腹を大きく凹ませる
- 大きく吸いながらお腹を大きく膨らませる
- ゆっくりお腹が大きく動いていることを意識しながら10~20回ほど行う
【ポイント】
・息を吐くときは一気に吐かずにゆっくり長く限界までお腹に力を入れて吐ききる
・息を吸うときは鼻から吸うことでお腹が膨らみやすくなる
② 身体を後ろに反すと痛い腰痛
身体を後ろに反らすと腰痛が起こる方は、日常的に背中が丸まる姿勢が多いです。このタイプの方は、身体の前側を伸ばし、後ろ側の筋トレを行います。
腸腰筋を伸ばす
- 片膝立ちになり背筋をまっすぐにキープ
- 後ろに下げている足の股関節付近を伸ばすイメージで重心を徐々に前に移動させる
- 反動は付けずにゆっくり20~30秒程度キープ
- 反対側の足も同じように行う
【ポイント】
・腸腰筋は下腹部の奥の方にあるのでお腹の奥の方が伸びているイメージで行う
【悪い例】 身体が反り過ぎたり前のめりにならないよう注意
太もも前側のストレッチ
- イスに掴まり右足を右手で掴む
- 曲げた足の太ももの前側が伸びていることを意識しゆっくり呼吸をする
- 片足20~30秒くらいずつ行う
【ポイント】
・膝が痛い方は無理に行わない
・足を掴めない方はタオルを足首にひかっけて引き上げるとやりやすい
【悪い例】 前のめりや反り過ぎは腰を痛める可能性があるので注意
背筋の筋トレ
- イスや床に座りタオルの端を両手で掴む
- タオルを持ち上げて頭のうしろで上下させる
- 30回程度行う
【ポイント】
・肩をしっかり動かし、背中の筋肉が動いていることを意識する
・お腹に力を入れて背中が反り過ぎないよう注意
・さらに負荷をつける場合はタオルの代わりにペットボトルなどを持つと良い
③ 左右に捻じると痛む
身体をねじると腰痛が起こる方は、カラダが硬いために腰をねじる動作の際、腰から無理やりねじっていると考えられます。このタイプの方は、全身をほぐしていきます。
脇腹伸ばし
- あぐらをかいて座る
- 片腕を頭の真上に上げゆっくり息を吐きながら横に倒す
- 片側ずつゆっくり20~30秒ずつ行う
【ポイント】
・上半身が斜めに倒れると伸ばしたい筋肉が伸びないので注意
・バランスが悪い方は、もう一方の腕を床に着けて行うと良い
【悪い例】 斜めに倒れない注意
上体反らしで起立筋伸ばし
- うつ伏せになる
- 両手を床について腕をしっかり伸ばし上半身を持ち上げる
- 息を吐きながら5秒キープ⇔ゆっくり身体を下げる
- 10回ほど行う
【ポイント】
・腰が痛い人は無理に行わない
・ひじをしっかり伸ばして姿勢をキープしお腹が伸びているイメージで行う
④ 身体を横に倒したとき痛む
身体を横に倒すと腰痛が起こる方は、普段何気なく行っている姿勢の癖が悪いため骨盤が歪んでいると考えられます。このタイプの方は、お尻や太ももの横側をほぐし体幹を鍛えていきます。
仙腸関節をほぐす
- 仰向けで寝る
- 腰を少し持ち上げて丸めたタオルを腰の下に挟み込む
- 膝を立て、ゆっくり90度まで持ちあげる
- 膝を左右に軽く倒す
- 20~30往復左右に倒す
【ポイント】
・身体が崩れないようにお腹に力を入れて行う
・膝を倒すとき足が離れないよう意識する
仙腸関節を動かす
- つま先を外側に向け両足を広げ、膝を軽く曲げ、膝に手を当て腰を落とす
- 背筋を伸ばし、膝に乗せた腕を支えにして片側の方を内側に入れ重心を真下に落とす
- 股関節の動きを意識しながら、反対側も同じように行う
- ゆっくり片側10秒を10回ほど行う
【ポイント】
・背中を丸めないよう背筋を張る
・肩を内側にグッと入れるイメージで行う
・上半身をねじるようなイメージで行う
【悪い例】 背中が丸まると仙腸関節が十分に動かないので注意
骨盤の横の筋トレ
- 椅子に浅く腰掛ける
- 骨盤をつかむイメージで腰に手を置く
- 腹横筋を使って片側のお尻を真横にグッと持ち上げる
- 反対も同じように持ち上げる
- 左右交互に20~30回ほど繰り返す
【ポイント】
・身体が前に倒れないように背筋を伸ばしてお腹に力を入れて行う
・左右のお尻に交互に重心が移動するように行う
・頭ごと身体が傾かないよう姿勢をキープ
【悪い例】 身体が倒れないように注意
5.①②③④以外で腰の痛みを感じる
例えば、日中は何ともなく寝起きだけ痛む、一日中歩きっぱなし立ちっぱなしの時だけ腰が痛む、激しい動き(スポーツ)の後に腰が痛むなどの場合は、筋肉疲労による腰痛が考えられます。このタイプの方は、全身をまんべんなくほぐし身体を温めて血行を良くしましょう。
猫のポーズ
- 両腕を上げ、猫のポーズになって背中を伸ばす
- 同時にお尻を少し上に突き出すことでお尻の筋肉もほぐす
- リラックスし呼吸をゆっくりしながら30~60秒ほど全身を伸ばす
【ポイント】
・肩から背中を床に押し付けるイメージでよく伸ばす
股関節回し
- 仰向けになって寝る
- 膝を曲げたまま片足を持ち上げ、片足ずつ順番に股関節を外側に回す
- 外回しが終わったら今度は内側に回す
- 外回し、内回しを左右30回ほど行う
【ポイント】
・左右、内回し外回しを行い、回りずらいまたは、動かしずらいと感じる動きがあったら重点的に行いましょう
ふくらはぎのストレッチ
- 仰向けになって寝る
- 片足を天井に向けて持ち上げる
- 片手で太ももを抑え、もう一方の手で足裏を抑え身体に引き寄せるようにする
- ふくらはぎにテンションがかかっていることを意識しながら30秒ほど行う
【ポイント】
・膝を曲げない
・足首を手前にゆっくり引き寄せる
・痛くても息を止めない
・無理せず「痛気持ちいい」と感じる場所をキープ
・伸びる範囲は個人差があるので初めのうちは無理しない
6.何をしても痛い
何をしていても、どんなポーズをとっても痛みの変化がなく、痛い状態が続いている方は自己流の運動やストレッチはお勧めできません。
一度しっかり専門医に診てもらうことをお勧めします。
【心因性腰痛】
また、どこが痛いのかはっきりと分からない、なんとな~く痛い感じがするなどの自覚症状が長く続いている方は、腰痛の原因として、ストレスなどの心理的要因が考えられます。
そのような場合は、生活習慣を変えてみたり、ウォーキングなど有酸素運動を取り入れることで慢性的な腰痛を軽減することも考えられます。
まとめ
『腰痛の種類に合わないストレッチで身体を痛めることはある!!』と言うことが分かりました。
ストレッチを行う際は、自分の腰痛の状態を把握して、症状に合ったストレッチを行うことが大切です。症状に合っていないストレッチは腰痛を悪化させてしまう可能性があるため注意が必要です。
しかし、自己判断で行うよりも一度専門機関に相談してみることをお勧めします。
鍼灸整骨院かまたきでは、症状に合わせた自宅での運動指導も行っております。ぜひご相談ください。